人材を評価する(評価制度の運用・処遇の管理) 採用・認定 読みもの(人事・労務向け記事)

中小企業ほど実践すると効果が出る!360度評価を実践してみよう!

投稿日:2019年2月8日

社員が評価制度に不満があるという声をよく聞くけれど、具体的にどうすればよいのだろう。

● 出来れば社員に定着してほしいのに、本音を話さずに黙って退職されてしまう。
● 残ってほしい人ほど去って行って、評価の低い社員ほど定着している。

中小企業の人事は毎日、悩みとの戦いです。
しかし、自社にマッチした人事制度を導入することが出来れば問題解決できる可能性があります。
今回は、中小企業が取り組むべき人事評価制度である360度評価について解説を行います。

360度評価とは?

360度評価とは上司が部下を評価するのではなく、上司や同僚、部下など職位関係なく多方面から社員を評価する手法です。

仕事の関連のある他の部署の同僚も評価に参加するなど柔軟に評価を行うことが可能な制度となっており評価の透明性が高くなる傾向にある評価方法ですね。

360度評価が登場した背景には、上司の負担軽減と人材育成の急務がある。

360度評価のメリットとして、上司の負担軽減と社員の成長に期待できるというメリットがあります。
昨今では中小企業を中心に、マネジメント業務の複雑化が起こっています。

従来は部下の評価を上司が行うような人事制度が隆盛していましたが、現在の上司(課長職以上の管理監督者)の仕事は複雑化しています。
昭和の時代の管理職であれば会社に着いてから新聞を読むような余裕もありましたが、現在の管理職は朝一番に会社に来てパソコンで資料を作成したりとプレイングマネージャーとなっている会社も多いです。

上司が自分の仕事を処理するのに手いっぱいな状況では、なかなか部下の評価を適正に行うことは難しいですね。
特に大企業では業務分掌が確立されており社内で管理監督者の仕事と一般社員の仕事は明確に分かれている傾向にあります。
それに対して中小企業の場合は業務分掌が整備されておらず、上司の仕事は忙しくなる一方という傾向にあります。

大卒の若者の平均離職率は3年で31%になっている。

厚生労働省の資料によると若者の3年以内離職率はなんと31%になっています。
上司が部下をしっかりと評価できず、目をかける時間が下がったことも要因の一つとなっている可能性があります。

上司が部下を見る時間がないにも関わらず、部下が上司からよく分からない基準で評価されていると感じると離職率は上がる傾向にあります。
もしも若手の離職率が高いと後進育成に支障が出るなど、中小企業にとっては大きな痛手を負うことにもなりかねません。

【参考】厚生労働省 学歴別就職後3年以内離職率の推移より

360度評価のメリットは中小企業ほど大きい

360度評価はメリットが大きく、中小企業であれば評価の軸を事前に固めることで、風通しの良い会社になる可能性があります。
360度評価を行うことによって、部下も上司を評価する対象となります。

上司が仕事をしにくいのではないかという危惧も生まれますが、360度評価は多面的な評価制度でありあくまでも上司の仕事負担の軽減と、社員育成のための制度です。
評価を給与の反映するのではなく後進育成のために導入すれば諍いは起こりにくいです。

360度評価を導入することによって、多面的に評価を実施することが可能になります。
上司にとっては「これくらいは言い過ぎではないだろう」という指導でも部下にとっては「あそこまで言うことはないじゃないか」というケースもあり、評価の軸を会社全体で先に決定することが重要です。

実際に360度評価を導入している企業の実例をご紹介

カゴメ株式会社では次世代社員の教育のために、360度評価を実施しています。

日常のマネジメント業務で管理監督者も含めて「気づき」を大切にしており、上司と評価される部下双方にとってのギャップを解消することで、より仕事のしやすい労働環境の構築を行っています。

一例として大手企業を取り上げましたが、中小企業でも360度評価は導入可能であり、上司の負担の軽減や、後進育成に活かせるものです。

【参考】カゴメHPより 

中小企業で実際に導入する方法とは?

360度評価を中小企業で実施する場合には、評価者教育を事前に全社員に対して行う必要があります。
会社として守ってほしいという指針などについては、評価者研修を企業の人事担当者が決定するようにしてください。

具体例をあげます。
評価者の評価指標で、戦力にならない社員がおり仕事をするとかえって邪魔になるという場合の上司の判断です。

例えば、上司Aと上司Bがいたとして、上司Aは「何もしないほうが仕事の邪魔にならないから高く評価する」とします。
上司Bは「何もしないわけにはいかないだろうから何か他の部署を手伝ったほうが高く評価する」とします。
戦力外社員に対する評価基準が統一されていないとこのような評価になってしまいます。

こうした場合は「仮に戦力外で仕事の邪魔になるような社員でも行動すれば評価する」という風に指針を事前に示しておけば評価が統一されます。

360度評価になると仕事の関連する他の部署の上司も巻き込んで評価することになるので、ジャッジがあやふやな部分を事前に統一しておけば会社全体として方針があやふやな部分を改善することも可能ですね。

360度評価で、会社を変えよう

360度評価は評価者研修を事前に行うことで、評価基準がより透明となり、会社全体を活性化することが可能です。
中小企業は社員間の距離が近いがゆえにかえって社員同士では深いところまで話が出来ておらず、なかなかお互いの本音が見えないというのも社員のストレスとなっていることも多いです。
360度評価で、中小企業だからこそお互いを評価しあう風通しの良い制度を構築してみませんか。

-人材を評価する(評価制度の運用・処遇の管理), 採用・認定, 読みもの(人事・労務向け記事)
-

関連記事

36協定「特別条項の上限時間」はどのくらい?複雑なルールを詳しく解説!

経営者や人事担当者でなくても、36協定(さぶろく)という言葉を耳にしたことのある人も多いのではないでしょうか。しかし、なんとなく意味を把握していても、2019年4月(中小企業は2020年4月)に改正さ …

【Q&A】退職する社員が引継ぎをせずに退職日まで「有給消化」する希望は応じるべき?

退職が決まっている従業員が後任者に引継ぎをせず、「退職日までに有給消化する」と言ってきた場合は、どう対応すれば良いでしょうか? 経営者が有給休暇を買い取れば、従業員に退職日まで働いてもらうことができる …

長野や和歌山の“旅先”で働く!? 「ワーケーション」導入を検討する企業が押さえておきたい、8つのポイント

「三密」を回避しながら、経済活動を再開する。この難易度の高い課題に、全世界が取り組む今、働き方の見直しが、これまでになかったスピードで進んでいます。新型コロナに起因する働き方のもっとも大きな変化が、な …

【2019年4月施行】有給休暇取得率向上に向けた取り組み事例を詳しく解説!

2019年4月より始まる「有給休暇5日取得の義務化」。年次有給休暇のうち5日については、雇う側が休むように促し、日を決めて休ませなければならないようになりました(※参考記事)。 この法律改正に絡んで、 …

36協定の新様式

【記入例有り】36協定の新様式、書き方完全マニュアル(社労士が解説)

新36協定のおさらい 2018年6月に成立した「働き方改革関連法」によって時間外労働の上限規制が変わります。それに伴い、36協定のフォーマットも新様式に変わりました。 この記事では、2019年4月から …