従業員の退職が決まっていて、まだ有休が残っているケースは多いです。そんな時、退職する従業員から「未消化の有給を買い取って欲しい」と言われることがあります。
実際に、会社に有給の買い取りをする義務があるのでしょうか?今回は、有給の買い取りについてのルールを解説していきます。
年次有給休暇の買い取りは原則認められない
労働基準法は、原則として会社が有給休暇を買い取ることを認めていません。そもそも、有給休暇とは、労働者が心身ともにリラックス、リフレッシュするために取得する権利です。
仕事から離れることで、ゆとりある生活を実現することを目的としています。そのため、会社が金銭で有給休暇を取得する権利を奪ってしまうのは目的に反するため、原則として認められません。残った有給休暇を買い取る義務はありませんので、買い取らなくても違法にはなりません。
会社が強制的に有給休暇を買い取った場合に罰則はあるの?
従業員が有給休暇を取りたいにも関わらず、会社が強制的に買い取りした場合は、「6箇月以下の懲役又は30万円以下の罰金」というペナルティがあります。
従業員に有給休暇を与えないことは、刑事罰に値する行為とされるので、人事担当者は注意が必要です。
【例外①】退職が決まっている時は有給休暇の買い取りは可能
従業員が退職することが決まっていて、退職日も確定し、未消化分の有給休暇がある場合は例外が適用されます。退職日までに消化できない場合は、未消化日数分の有給休暇を会社が買い取ることが可能です。ただし、注意点としては、退社する従業員が買い取りを希望する場合に限られます。
従業員は退職日までに有休消化をしたいと希望しているのに、会社側が「残った有給休暇は買い取るので、退職日まで勤務してください」と強制することは不可です。この場合、たとえ退職時であっても、強制的に買い取りを命じているので違法となります。
【例外②】有給休暇の日数を超えて有給休暇を付与している場合
労働基準法で定められた有給休暇の日数を超えて有給休暇を付与している場合は、法定日数を超えた分については、買い取りが認められています。
【例外③】時効で有給休暇が消滅してしまった場合
有給休暇は付与されてから2年間経つと、その権利が消滅することになっています。時効2年の間に使い切れなかった有給休暇は、買い取りが認められています。
前もって提案することはできる
退職する従業員が退職日までに有給休暇を取りたいと希望しているのに、有給休暇の買い取りを強制することはできません。しかし、本人が希望を出す前に「残った有給を買い取るので、退職日まで勤務してもらえませんか?」と提案することは問題ありません。打診するタイミングが早ければ早いほど、本人がゆっくり決める時間があります。早く提案すれば、会社からの提案を受け入れてもらえるケースもあります。
最終的な判断は従業員自身が決めること
退職日までに残った有給休暇を取得するか、または買い取りにして退職日までギリギリ働くかは、従業員本人の意思に委ねられています。退職日までに有休消化を望んでいる方は、素直にその意志を伝えましょう。
まとめ
会社が有給休暇を買い取りすることは原則として認められませんが、例外が適用されると可能です。ただし、有給休暇の買い取りは法律上定められた制度ではありません。実際は、退職する従業員との調整や交渉が必要になる場合も少なくありませんので注意が必要です。従業員が退職する際には、未消化分の有給休暇をどうするか早めに検討することをおすすめします。