今月のおすすめ記事 助成金・補助金 育休 読みもの(人事・労務向け記事)

【2023年度】助成金を活かして男性育休を取得するイクメンを支えよう!

投稿日:2023年9月4日

新聞報道などで何かと話題の少子化問題。その原因の一つとして育児の担い手が女性に集中していることが挙げられています。この問題に対処するため、育児を男女で共同して担うべく、男性育休の取得推進に向けて助成金をはじめ様々な施策が進められています。

この記事では「男性育休の取得を推進することによる企業のメリット、特に経済面でのメリット」と「考えられる助成金制度」を中心にご紹介します。

今、なぜ男性育休が注目されるのか

少子化問題の原因の一つが、家庭における育児の負担が女性に集中していることと考えられています。これは「育児は女性が担うべきもの」という社会の意識に根ざしているものであり、企業や男性の育児への関与がこれまであまり多くなかったのです。

厚生労働省「令和4年度雇用均等基本調査」における男性育休取得率は17.13%。前年度の13.97%から3%強の増加で過去最高を記録しており、従業員数1,000人超の企業(厚労省調査への回答企業)に限定すれば、約46.2%となっています。

このように男性育休の取得率は高まってきているものの、国が定める目標(民間企業の男性育休取得率を2025年に50%、2030年に85%とする)には大きな隔たりがあるのが現状で、今後目標達成に向けて男性育休取得を促すための様々な施策が打たれることが考えられます。

その一環として、産後パパ育休制度を利用して育休を取得した男性従業員の育児休業給付の給付率を引き上げることが検討されているほか、新聞報道によると2023年4月より従業員数1000人超の企業を対象に義務化された男性育休取得率の公表について、今後、対象となる企業を「従業員数300人超」まで拡大する方向で検討されているようです。

このように男性育休の取得を促す動きは世の中の大きな流れになっているため、事業主や人事労務担当者としてしっかりとキャッチアップしていきましょう。

男性育休が企業にもたらすメリット

では、企業として男性育休の取得を促すことにはどのようなメリットがあるのでしょうか。

まず第一に、働き方改革や両立支援への取り組みが、良い企業イメージにつながるため、新規採用や中途採用における自社のイメージアップになることが挙げられます。
また、社内では男性育休に対する理解が深まることを通じて職場風土が改善されることから、従業員満足度やワークエンゲージメントの向上にもつながります。

そしてこれらのメリットに加え、支給要件に該当することで国や自治体が設けている助成金などを受けることができることもあります。支給された助成金は返還不要で使途が限定されないというメリットもあります。

以下では男性育休の取得促進に関連する助成金のうち、国が設けている「両立支援等助成金」を紹介します。また、地方自治体にも東京都が設けている「働くパパママ育業応援奨励金」などがあるので、詳細は各都道府県市区町村のHP等で確認してみてください。

「働くパパママ育業応援奨励金」(東京都)
https://www.shigotozaidan.or.jp/koyo-kankyo/joseikin/papamamaikukyusyutoku.html

両立支援等助成金(2023年度)の概要

両立支援等助成金は、子育てや介護を行う従業員の雇用を継続するための就業環境整備に取り組む事業主への助成金で、中小企業事業主のみが対象です。
中小企業事業主とは以下の表の要件に該当する企業の事業主です。
(資本額・出資額の要件と従業員数の要件はどちらかを満たせば該当します。)

業種 資本額または出資額 常時雇用する従業員数
小売業(飲食業含む) 5000万円以下 50人以下
サービス業 5000万円以下 100人以下
卸売業 1億円以下 100人以下
その他 3億円以下 300人以下

両立支援等助成金には3つのコースがあり、そのうち男性育休に主に関係するコースは「出生時両立支援コース(子育てパパ支援助成金)」です。

「育児休業等支援コース」についても、育休取得や職場復帰の支援等に対する助成金で、もちろん男性育休についても該当します。ただしコース中に3種類ある助成金のうち2種類は3か月以上の育休取得が前提であり、3か月に満たないケースが多い男性育休は対象にならないこと、「出生時両立支援コース」の助成と併給できない場合があること等の制約もあるため、育休取得期間を勘案して男性育休に対して「育児休業等支援コース」で助成を受けるべきかどうかは検討が必要です。

「育児休業等支援コース」の支給要件の詳細は厚労省パンフレットを確認してください。
https://www.mhlw.go.jp/content/001082093.pdf

出生時両立支援コースとは?

「出生時両立支援コース(子育てパパ支援助成金)」は、男性育休が取得しやすい雇用環境整備や業務体制整備を行い、実際に育児休業を取得した男性従業員が生じた事業主に支給します。1事業主につき1回の支給となり、第1種、第2種(第1種の助成を受けた事業主のみ)の2種類があります。助成金の支給要件、支給額は以下の通りです。

第1種(男性育休取得の環境整備+実際の育休取得で支給)

要件

  • 育児・介護休業法に定める雇用環境整備措置(以下①~④)を複数(※)行っていること

    ①従業員に対する育児休業に係る研修実施
    ②育児休業に関する相談窓口の整備
    ③従業員の育児休業取得に関する事例の収集、当該事例の提供
    ④従業員に対する育児休業に関する制度と育児休業取得促進に関する方針の周知

    ※産後パパ育休取得申出期限を「休業開始予定日2週間前超」(3週間前、1ヶ月前等)としている事業主は①~④のうち3つ以上、それ以外の事業主は2つ以上
    ⇒申出期限を原則の「休業開始予定日の2週間前」としている場合は2つ以上でよい。

  • 育児休業取得者の業務を代替する従業員の、業務見直しに係る規定等(※)を策定し、当該規定に基づき業務体制の整備をしていること。

    ※業務見直しに係る規定等とは、育休取得者の業務の整理、引継ぎや引継ぎ対象業務の見直し等の規定(就業規則等)

  • 男性従業員が子の出生後8週間以内に開始する連続5日以上の育児休業を取得すること
    (育児休業期間中に所定労働日が4日以上含まれていることが必要)
  • 上記育児休業開始前までに、育児休業制度を労働協約または就業規則に定めていること
  • 次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画を策定し、労働局に届け出ていること
  • 対象の男性従業員を、育児休業開始日から支給申請日までの間、雇用保険被保険者として継続して雇用していること

代替要員加算

男性従業員の育休期間中の代替要員を新たに確保した場合に支給

育児休業等に関する情報公表加算

自社の育児休業の取得状況(男性の育児休業等取得率、女性の育児休業取得率、男女別の育児休業取得日数)を厚労省が運営する「両立支援のひろば」サイト上で公表した場合に支給額を加算。

支給額

基本 20万円
代替要員加算 20万円(代替要員3人以上確保で45万円)
育休等に関する情報公表加算 2万円

第2種(第1種を受給し、男性育休取得率上昇した場合に支給)

要件

  • 第1種の助成金を受給していること。(第2種のみの助成を申請できない)
  • 育児・介護休業法に定める雇用環境整備措置を複数行っていること。
  • 育児休業取得者の業務を代替する従業員の、業務見直しに係る規定等を策定し、当該規定に基づき業務体制の整備をしていること。
  • 第1種の申請をしてから3事業年度以内に、男性従業員の育児休業取得率(%)の数値が30ポイント以上上昇していること。
  • または

    第1種の申請年度に子が出生した男性従業員が5人未満かつ育児休業取得率が70%以上の場合に、その後の3事業年度の中で2年連続70%以上となったこと。

  • 育児休業を取得した男性従業員が、第1種申請の対象となる従業員の他に2人以上いること。
  • 支給額

    1事業年度以内に30ポイント以上上昇 60万円
    2事業年度以内に30ポイント以上上昇
    (または連続70%以上)
    40万円
    3事業年度以内に30ポイント以上上昇
    (または連続70%以上)
    20万円

    まとめ

    男性育休取得促進の取り組みを通じて企業にもたらされるメリットが多いのはこれまで述べてきたとおりです。
    特に助成金については、支給要件や申請手続など複雑な面もありますので、自社で進めるのが難しいようであれば社会保険労務士などの専門家に相談しながら進められることをおすすめします。

    【参考】

    -今月のおすすめ記事, 助成金・補助金, 育休, 読みもの(人事・労務向け記事)
    -, ,

    関連記事

    【2019年4月施行】36協定を違反した場合の「罰則」を分かりやすく解説!

    あなたは36協定(さぶろく)と聞いて、詳細な内容、違反した場合や、提出しない場合の罰則・デメリットなどを正しく説明できるでしょうか。以前厚生労働省が行った調査では、過半数の企業が36協定を提出せずに従 …

    建設業の「墜落転落災害防止対策」強化について徹底解説

    建設業では、足場を点検せず手すりが未設置の状態で作業を進めた結果、死亡災害が発生しているケースもみられることから、喫緊の課題として認識されています。 そのため、厚労省ではマニュアル見直しを提案し、木造 …

    【事例紹介】働き方改革の各企業の取り組み事例をご紹介!

    平成30年7月に「働き方改革関連法」が成立しました。その法令内容は一部を除き、本年2019年4月から適用されます。大きな変革点は下記5点です。 労働時間の法制の見直し (長時間労働の禁止) 有給休暇の …

    【社労士が解説】従業員の健康管理と「ヒトを大切にする経営」

    安全衛生法が改正となり、2019年4月より、すべての企業を対象に「健康情報取扱規程」の策定が義務づけられました。 背景には、ストレスチェック制度の導入や、産業医による面接指導が強化されたことで、企業が …

    最低賃金はアルバイトやパート雇用だけの話だと思っていませんか?最低賃金について押さえるべきポイントとは

    最低賃金制度とは 最低賃金制度とは、最低賃金法に基づき国が賃金の最低限度を定め、使用者は、その最低賃金額以上の賃金を支払わなければならないとする制度です(厚生労働省のHPより)。 中央最低賃金審議会が …