新型コロナ(以下コロナ)ウイルスが世界的に広がり始めてから3年以上の月日が経過しました。
2023年5月8日を境に、コロナは5類感染症に変更され、多くの対策が自己判断に委ねられるようになっています。それでもなお、感染者は依然として多く見受けられ、労働者と事業者にとって最適な行動と対策は何かを考える必要があります。
この記事では、コロナウイルスの感染法上の位置づけの変遷と対策の変更点について詳しく解説します。
コロナの感染症法上の変遷と取り扱いの変化概要
2019年に中国の武漢で報告されたコロナウイルスは、世界的な流行を引き起こしました。2020年には日本でも初の感染者が確認され、その後も感染が広がり、2021年2月には「指定感染症」から「新型インフルエンザ等感染症」に変更され、具体的な対策は「2類相当」で行われます。
そして、今年の5月8日には「季節性インフルエンザ」と同等の「5類感染症」になりました。感染法上の類型は感染症の予防と、適切な医療の提供が目的です。感染力と重症度に応じて1類から5類までの分類が設けられています。これにより法的な措置も異なるのです。
「指定感染症」「新型インフルエンザ等感染症」等、別枠の類型も存在し、感染症の変化に応じて適切な対策が取れるようになっています。詳細は厚生労働省HPにある資料を参照してください。
次は、その類型によって変わる措置について、私たちの身近なところから解説します。
コロナ対策は類型の変遷に合わせて変化しており、指定感染症だった時期には入院措置が全患者に適用され、その後高齢者等に重点化されました。5類感染症となった現在、これらの措置は適用されないものとなっています。
感染症法に基づく主な措置の詳細は、厚生労働省の資料に詳しく記載されています。下記リンクをご参照ください。
感染症法に基づく主な措置の概要
コロナ5類の変更点
※引用:新型コロナウイルス感染症5類感染症移行後の対応について-厚生労働省
5類感染症となったコロナ感染症は、その対策について政府からの指導や指示ができないものとなりました。以下、政府が示す新型インフルエンザ等感染症と5類感染症の主な違いです。
入院措置等での行政の介入は無くなり、外出自粛やマスクの着用は個人の判断に委ねられ、医療費負担等にも変更があることが分かります。
さらに詳細な情報は厚生労働省のウェブサイトでご確認ください。
次項からは、各論として項目ごとに解説していきましょう。
コロナ5類の変更点各論 【マスク編】
マスク着用に関しては5月8日の5類移行を待たず、3月13日時点で「個人の主体的な選択を尊重し、着用は個人の判断に委ねられること」となり、政府の一律な基本対策が不要となりました。具体的な判断基準を考えてみましょう。
新型インフルエンザ等感染症 | 5類感染症(5/8以降) |
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マスク着用は個人の判断に委ねられますが、以下に着用のポイントをあげます。
自分を守るための効果的な着用
- ラッシュ時の交通機関
- 流行期間の混雑場所
- 医療機関受診時
- 重症化リスクがある(基礎疾患もしくは高齢であるなど)
他人を守るための効果的な着用
- 医療機関受診時
- 高齢者施設・医療機関への訪問時
- 症状がある場合、コロナ陽性の場合
- 同居家族に陽性者がいる場合
なお、接客業等の事業者 が感染対策上又は事業上の理由等により、利用者又は従業員に マスクの着用を求めることは許容されています。
各自治体や事業者、家庭などにおいて、マスクの適切な着用についての情報を周知することが重要です。
コロナ5類の変更点各論 【外出自粛編】
次に外出自粛に関する変更点を紹介しましょう。
コロナ感染者に対する外出自粛は法的要件ではなくなり、外出の可否は個人の判断に委ねられました。以下、変更ポイントを示します。
新型インフルエンザ等感染症 | 5類感染症(5/8以降) |
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外出を控えることが推奨される期間
発症日(無症状の場合は検査のための検体採取日)の翌日から5日間、5日目にも症状がある場合は症状が軽快してから24時間経つまでは外出を控えるよう推奨。
周りの方への配慮
コロナに感染した際、感染者が排出するウイルス量は症状が出る2日前から発症後7〜10日目まで、他の人に感染する可能性があります。10日が経過するまでは、ウイルスの排出の可能性も。不織布マスクの着用、高齢者等重症化リスクの高い方との接触は控えるなど配慮が必要でしょう。
その他のポイント
医療機関や高齢者施設等においては、従事者がコロナに感染した際の就業制限を考慮する必要があります。
これらの変更点について、詳細な情報は厚生労働省のリンクをご参照ください。
コロナ5類の変更点各論 【傷病手当金編】
コロナが5類に変わったことで、傷病手当金の手続きについても変更がありました。
新型インフルエンザ等感染症 | 5類感染症(5/8以降) |
医師の証明不要 (臨時的取り扱いがなされていた) |
他の傷病申請と同様、医師の証明が必要。 |
5類に変更になる以前は、臨時的な取り扱いとして、コロナウイルス感染症に関わる傷病手当金の申請に医師の証明は必要ありませんでした。
5類に変更になった5月8日以降は、他の傷病申請と同じように医師の証明が必要となっています。
コロナに関する傷病手当金のポイント
傷病手当金は被保険者が労務不能と認められない限り支給されません。
傷病手当金は、療養のため労務に服することができなくなった日から起算して3日を経過した日から労務に服することができない期間に対して支給されます。
自覚症状がなくコロナ陽性と判定され、療養のため労務に服することができないときは支給対象と成り得ます。
濃厚接触者となった場合、従業者自身の労務不能が認められない限り支給対象になりません。
以上、傷病手当金に関する変更点を解説しました。申請に関する諸手続きは各事業所にご確認ください。
また、傷病手当金の申請については、従業員間では意外と認知されていないものです。各事業所においては、傷病手当金申請方法などを再周知するなどの機会として捉えると良いかもしれません。
コロナ5類の変更点各論 【感染時の休暇編】
コロナ5類感染者の感染時の休暇に関する変更点について説明します。感染者の休暇についての判断が個人や事業者に委ねられる現状を見てみましょう。
新型インフルエンザ等感染症 | 5類感染症(5/8以降) |
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感染者は、以前は自宅療養が基本でしたが、外出自粛の要請が撤廃され出勤することも可能となりました。
感染法上のルールは変わりましたが、ウイルスの性質は変わりません。無症状の感染者や重症リスクの高い人々が存在します。特に高齢者や持病のある方との接触には注意が必要です。事業者は従業員の健康管理に気を配り、休暇を取得しやすい環境を整備する必要があります。
5類感染症の場合、感染者が出勤すること自体に法的な問題はなくても事業者は従業員の安全配慮義務を負っています。感染拡大を防ぐためには、感染防止のルール設定や従業員への教育、休暇手続の整備が不可欠です。
感染者が出勤するか休暇を取るかについては、テレワークの実施や休暇の要請の形式など、各会社のルールが必要でしょう。実際、5類移行後に休暇取得についてのルールが曖昧なためにトラブルとなった事例もあります。
感染を防ぐために休業命令が必要な場合、休業手当(平均賃金の60%以上)の支給が求められます。感染者の出社意向や家族の感染リスクにも配慮し、ルールの決定と周知を行うことが大切です。
まとめ
いかがでしたでしょうか。コロナが5類に移行したことによる主要な変更点を解説しました。
各種対策について、これを機に働きやすいルール作りや周知を行い、お互いを配慮できる職場を目指しましょう。