助成金・補助金 読みもの(人事・労務向け記事)

時間外労働等改善助成金(勤務間インターバル導入コース)を詳しく解説!

投稿日:2019年7月31日

国内の労働環境を改善するため、国は労働時間の見直しや有休休暇の取得促進などの内容を盛り込んだ「働き方改革関連法」を2018年に成立させ、2019年4月から適用されています。

働き方改革の取り組みを促進するにあたっては、人的リソースや資金力の乏しい起業や団体に対して支援を行う必要があります。このような支援の一環として、「時間外労働等改善助成金」が設けられています。

本助成金には、勤務間インターバル導入コース、時間外労働上限設定コース、職場意識改善コース、テレワークコースの4つのコースが設けられていますが、今回は「勤務間インターバル導入コース」について解説します。

時間外労働等改善助成金(勤務間インターバル導入コース)の概要

「勤務間インターバル」とは、勤務終了後に一定時間「休息時間」を設けることで健康保持や過重労働の防止を図るものであり、平成31年4月から制度の導入が義務化されています。

助成金の活用方法としては、助成金によってインターバル制度を導入するために設備・機械等を導入することで生産効率性の向上が期待できることや、労務管理用機械やソフトウェアの導入により士業・終業時刻を正確に管理できるようになることなどが挙げられます。また、外部専門家によるコンサルティングや人材確保に向けた取組等についても助成対象となっています。

いずれの取組においても、助成金を活用することで労働環境の改善と共に企業の生産性向上も達成できることがメリットとなっています。

勤務間インターバル導入コースの助成内容

対象事業主

本補助金の助成対象になるには、以下のいずれかに該当する中小企業事業主であることが条件となります。

①勤務間インターバルを導入していない事業場
②既に休息時間数が9時間以上の勤務間インターバルを導入している事業場であって、対象となる労働者が当該事業場に所属する労働者の半 数以下である事業場
③既に休息時間数が9時間未満の勤務間インターバルを導入している事業場

以上の3つの条件によって、それぞれ補助率が変わりますので、自社がどの条件に該当するか確認する必要があります。
また、支給対象となるには以下のいずれかの取組を1つ以上実施することが条件とされています。

① 労務管理担当者に対する研修
② 労働者に対する研修、周知・啓発
③ 外部専門家によるコンサルティング
④ 就業規則・労使協定等の作成・変更
⑤ 人材確保に向けた取組
⑥ 労務管理用ソフトウェア、労務管理用機器、デジタル式運行記録計の導入・更新
⑦ テレワーク用通信機器の導入・更新
⑧ 労働能率の増進に資する設備・機器等の導入・更新

なお、①、②における「研修」には業務研修も含まれます。また、⑥、⑦、⑧における機器等の導入・更新は、原則としてパソコン、タブレット、スマートフォンは対象になりません。
また、本補助金の支給対象になるには、インターバル制度の取組に関する「成果目標」を達成することが求められます。

新規導入の場合は「新規に所属労働者の半数を超える労働者を対 象とする勤務間インターバルを導入すること」、インターバル適用範囲を拡大する場合は「対象労働者の範囲を拡大し、所属労働者の半 数を超える労働者を対象とすること」、インターバルの時間を延長する場合は「所属労働者の半数を超える労働者を対象とし て、休息時間数を2時間以上延⾧して、9時間 以上とすること」が成果目標となります。

支給額

上述の成果目標を達成した場合、取組実施に要した経費の一部が支給されます。補助率と上限額については、以下の通りです。

新規導入に該当するものがある場合

休息時間数 補助率 上限額
9時間以上11時間未満 3/4 80万円
11時間以上 3/4 100万円

適用範囲の拡大・時間延長のみの場合

休息時間数 補助率 上限額
9時間以上11時間未満 3/4 40万円
11時間以上 3/4 50万円

このように、基本的には補助率は経費の3/4とされていますが、常時使用する労働者数が30名以下かつ、支給対象の取組で⑥、⑦、⑧を実施する場合で、その所要額が30万円を超える場合の補助率は4/5となります。

昨年度からの変更点

本補助金は昨年度も支給されていますが、昨年度と内容や予算額が異なっています。

勤務間インターバルコースは、昨年度が要求額ベースで1,027,974千円であったのに対し、31年度は1,104,767千円となっています。
また、昨年度は新規導入に該当する場合は9時間以上11時間未満で40万円、11時間以上で50万円でしたが、今年度は上記のように上限額が2倍になっています。同様に、適用範囲の拡大・延長に該当する場合も、昨年度は9時間以上11時間未満で20万円、11時間以上で25万円でしたが、今年度は上限額が2倍とされています。
また、支給条件や休息時間数の区分などには変更はありません。

自社の労働条件の向上と業務効率化を促進するためにも、本助成金の活用を検討してみましょう。

-助成金・補助金, 読みもの(人事・労務向け記事)
-,

関連記事

【6月15日最新版】「雇用調整助成金」は結局どうなった?助成率、申請方法、上限額の最新情報をまとめて公開!

新型コロナウィルスの感染拡大により、多くの企業が従来通りの営業ができない状況にあります。とくに、外食・小売・宿泊・娯楽産業などでは、長い「休業」を余儀なくされた企業もたくさんありました。会社都合の意思 …

年末調整の電子化で業務はどう変わる?メリットと課題まとめ

令和2年分の年末調整から、手続きの電子化にむけた施策が実施されます。その一環として、国税庁から年末調整控除申告書作成用ソフトがリリースされました。何かと忙しい年末のこの時期、「年末調整業務を電子化して …

【2020年4月施行】「女性活躍推進法改正」で何が変わる?法改正のポイントと「一般事業主行動計画」の立て方を社労士が解説!

国連の定めた持続可能な開発目標(SDGs)の中に、「ジェンダー平等を実現しよう」という目標が盛り込まれ、女性の活躍がESG投資の指標のひとつにもなっている昨今。企業における女性の活躍は、今まで以上に重 …

【人事労務担当者必見】マイナンバーカードの健康保険証利用についてのポイントを徹底解説!

オンライン資格確認等システムの設置が進み、2023年4月から日本全国すべての医療機関・薬局で、マイナンバーカードを健康保険証として利用できる制度が始まっています。 マイナンバーカードの健康保険証利用対 …

コロナ禍の長期化により導入する企業が増加中―「在籍型出向」の概要と導入方法、国の支援について解説

新型コロナウイルスの感染拡大で、様々な業界が大きな経済的痛手を受けています。これらの業界では仕事量が減少し、余剰人員を抱えている状況です。一方で、有効求人倍率(季節調整値)は、この状況下においても1. …