新型コロナによる臨時休校・休園が始まってから約2カ月。子どもの預け先がなくなったことで、仕事を休まざるをえなくなった方も多いのではないでしょうか。「雇用調整助成金」ほど注目されてはいませんが、休校により休業せざるをえなくなった従業員の所得を補償する助成金制度があります。「小学校休業等対応助成金」です。本記事では、「小学校休業等対応助成金」の制度概要、手続きの仕方について詳しく紹介します。
コロナ休校対策として生まれた「小学校休業等対応助成金」とは?
「小学校休業等対応助成金」は、新型コロナによる休校・休園などのために、仕事を休むことになった従業員に対し、年次有給休暇とは別に「特別な有給休暇」を付与し「賃金の全額」を支払った場合に、その一部を国が助成する制度です。目的は、休業保護者の雇用維持と生活補償。臨時休校・休園により、子育て世代にしわ寄せがいってしまうことを防ぐために設けられた新制度だといえます。
助成額や対象となる労働者は異なるものの、仕組みは昨今注目されている「雇用調整助成金」とよく似ています。中身を詳しく見ていきましょう。
対象となる企業は?
本制度の対象企業は、規模や業種問わず従業員を雇用するすべての企業が対象です。
どんな労働者が対象となる?
対象となる労働者は、新型コロナによる臨時休校・休園などにより、仕事を休まざるをえなくなった保護者です。もう少し詳しく紹介します。
対象となる学校・預け先は?
新型コロナのために休校・休園となった、保育園・幼稚園・小学校(障がいのある子どもについては、中学校・高校も含める)となります。中学校以上は、一般的に保護者がいなくても留守番ができるので、対象に含まれていません。年齢としては0歳~12歳年度末、つまり小学生以下ですね。
どういうケースが対象になる?
これらの学校や預け先に通わせる子どもをもつ保護者が、以下の理由で仕事を休まなければならない場合が対象となります。
- ✓新型コロナによる 臨時休校・休園
- ✓子どもが新型コロナに感染(感染疑いがある/重症化する基礎疾患を持つ場合も可)
保護者とは?
この場合の「保護者」についてですが、「子どもを現に監護する者」とされています。一般的には両親になることが多いと思いますが、それ以外の親権者、未成年後見人、里親、祖父母なども対象に含められています。また、一時的に補助する親族(両親の兄弟姉妹など)も含めてOKとされました。
保護者の雇用形態などは?
正規・非正規問わず、すべての業種・職種が対象です。雇用保険被保険者以外の短時間アルバイト・パートも対象に含めることができます。ただし、あくまで「特別な有給休暇」を付与し、賃金の全額を支払った場合に限り、です。
対象となる期間は?
「小学校休業等対応助成金」制度が使える期間は、2020年2月27日~6月30日まで。この間に付与した特別有給休暇について、助成を受けることができます。
ここで注意すべき点は、上記期間中であっても、もともと通学の予定のなかった日は含められません。たとえば、学校がお休みの土・日・祝や春休み、ゴールデンウイークなどは、助成の対象外となります。ただし、春休み期間中は、学童保育に通わせているご家庭も多いでしょう。通っている学童が臨時休園となったことで休業する場合は、小学校の春休み期間中でも含められます。
助成される額は?
助成額は、以下の通りです。
※ただし、日額上限8330円
ここで注意したい点が、仕事を休んでいるという理由で、休業中の賃金額を減額してはいけないということ。通常の有給休暇取得時に支払う額と同じ額を支払わねばなりません。たとえば、休業手当のように、通常支払う賃金の6割などに減らしてしまったり、日額上限にあわせて8330円しか支払わなかった場合、この制度は使えません。あくまで、通常の有休を付与する場合と同様に、賃金の全額を支払わねばならない点に、注意が必要です。
そこさえクリアできれば、日額8330円を上限として、支払った額の全額が助成されます。100%の助成なので、「雇用調整助成金」と比べて手厚い制度だといえます。
「小学校休業等対応助成金」を受給するために必要な手続きの手順は?
ここからは、助成金を受給するために、企業が行う手続きについて紹介します。手順は以下の通りです。
L 対象労働者全員に「有給休暇取得確認書」に署名・捺印をもらう
「臨時休校・休園を証明する書類」を提出してもらう
L 申請書類、添付書類を記載・準備する
▼ 地域ごとの申請先に書類一式を郵送する(9月30日〆)
▼ 書類に不備があれば返送されるので、修正して再提出する
▼ 審査が通れば申請額が振り込まれる
なおこの申請は、「事業所ごと」ではなく、「法人ごと」にまとめて提出します。全国に拠点のある大企業だと、社会保険関連の書類を本社や支社ごとに提出していることが多いですが、本制度については、「法人ごと」で提出するよう定められています。本社も支社も、地方の工場分も、全部一括して、本社で提出するということですね。
次のページでは、申請書類の種類と記入例について説明します。