2020年に入り、新ウイルスという新たな社会的脅威に対して目まぐるしく状況が変わっています。コロナ禍となる前までは、同一労働同一賃金対応、パワハラ防止法そして、年度更新、算定基礎届などを新たな法改正事項と定例業務とを並行して進めていく予定であったところ、半ば強制的にコロナ対応を第一優先にせざるを得なかった企業も多いでしょう。
今回は、法改正がなされた年度更新にフォーカスをあて、基本的な確認、当初から盛り込まれていた法改正、コロナ禍により生まれた法改正を確認していきましょう。
年度更新の基本
まず、年度更新とは、端的には毎年6月1日から7月10日に前年度に支払った保険料の清算と、同時に、新年度分の保険料の納付を概算で支払う手続きです。尚、保険料には、労働者の給与や賞与からの徴収分と事業主支払い分を合わせた保険料を指します。
よくある誤りで、労災保険と雇用保険を総称して労働保険と定義しますが、労災保険料は労働者の給与などから控除されません。労働者の給与などから控除されるのは、雇用保険料のみであることを確認しましょう。すなわち、労災保険料は全額事業主負担ということです。
年度更新の変更点
大きな改正点の一つに、「免除対象高年齢労働者の猶予期間の終了」が挙げられます。これは、期間としては、令和2年3月31日をもって終了しましたが、内容は令和2年度の年度更新から、前年度分である「確定保険料」は免除対象高年齢労働者の「適用あり」となりますが、今年度適用分の概算保険料は免除対象高年齢労働者の「適用なし」ということです。
間違いが予想される論点として、前年度の確定保険料と同じく、今年度の概算保険料にも免除対象高年齢労働者の適用をしてしまい、後から指摘されるということです。また、4月1日時点で64歳以上の労働者の給与などからも「雇用保険料」は徴収が既に開始されていますので、今一度確認しておきたい部分です。
尚、免除対象高年齢労働者とは、保険年度の初日(4月1日)において64歳以上である労働者(季節労働者および日雇い労働者を除く)を指します。これに該当する労働者の給与などからは雇用保険料を控除する必要はなく、会社として支払う賃金総額からも当該労働分の賃金は減額した額とすることがきます。
コロナの影響
本来、年度更新はコロナの影響を考慮し、今年度は6月1日~7月10日の納付期限を6月1日~8月31日まで延長できるということです。
また、コロナの影響により、事業収入が相当減少している場合、労働保険料等の納付を1年間猶予することができます。当該申請は8月31日までの年度更新期間中に申請が可能です。尚、納付猶予の特例が適用されると、担保の適用は不要となり、延滞金も課されません。
猶予の要件は以下のとおりです。
納付期限の猶予要件
- コロナの影響により令和2年2月以降の任意の期間(1か月以上)において、事業に係る収入が前年同期比概ね20%以上減少していること
- 前記により、一時に納付を行うことが困難であること(困難であるか否かの判断については向こう半年間の事業資金を考慮するなど、置かれた状況を把握し、対応)
- 申請書が提出されていること
対象は令和2年2月1日から令和3年1月31日までに納期限が到来する労働保険料等が対象となります。
申請書作成のためのソフト
様々なHRテックが発売されていますが、今回は、人気のあるソフト「人事労務freee」を確認しましょう。
人事労務freeeのメリット
- 人事労務freeで確定した給与明細は自動で集計される
- 保険料は自動計算
- 申告書への記載は不要
- ネット上で社労士による代理申請が可能
- ネット上で完結(申告~納付)
※電子証明書の取得費用が別途発生します。そして、電子公文書(申請書控)の取得には未対応です。
電子申請や口座振替
今年度の年度更新からいわゆる大企業は電子申請が義務化されました。尚、いわゆる大企業と明記した部分は正式には「特定の法人の事務所」とされ、資本金、出身金または銀行等保有株式取得機構に納付する拠出金の額が1億円を超える法人などと定義されています。
口座振替とは、事業主が口座を開設している金融機関に口座振替納付の申し込みをすることで、届け出のあった口座から金融機関が労働保険料および一般拠出金を引き落とし、国庫へ振り返ることにより、納付することです。
電子申請および口座振替のメリット
- 窓口へ行く手間や待ち時間が解消
- 納付忘れや遅延を防げるために延滞金が課される心配が解消
- 手数料は不要
- 保険料の非企図指趾に最大約2ヶ月のバッファーがある
また、最後に挙げた口座振替のメリットとして最大約2か月のバッファーとは、通常の納期限である7月10が口座振替とすると9月6日までの期限となり、58日間ものバッファーが生まれます。そして、第2期の納期限は通常10月31日のところ11月14日となり、14日間。第3期の納期限は1月31日のところ、2月14日となり、14日間のバッファーが生まれる点です。これは、特に昨今のコロナの影響で資金繰りに難渋することが予想される場合、覚えておいて損はない部分です。
手続きについても申込用紙(厚生労働省HPからダウンロード)を記入し、金融機関の窓口へ提出で完了です。(一部の金融機関では対象外となっていることもあるため事前に要確認)
尚、申し込みの締め切りについては、9月6日納付分は2月25日、11月14日納付分は8月14日、2月14日納付分は10月11日となっております。
また、引き落とし日の約3週間前に引き落とし内容を葉書でお知らせされます。そして、引き落とし後も約3週間後に引き落とし結果を葉書でお知らせされます。万が一、振替日に保険料の引き落としができなかった場合も連絡が入りますので安心です。
雇用調整助成金への影響
雇用調整助成金申請の要件として、売上高5%減の証明をしなければなりません。この5%減がボーダーラインにある企業の場合、申請のタイミングが重要です。例えば労働保険の確定保険料の額が今年の申告額(2019年)の方が高額であり、昨年の申告額(2018年)の方が上限未満の場合、今年の申告を済ませてから申請する方が望ましいと言えます。
問い合わせ先
事業所所轄の「労働局」、又は「労働基準監督署」です。尚、助成金申請については、「労働局」又は「ハローワーク」となります。