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【2022年10月】雇用保険料率の変更で本人と会社の負担は増加?

投稿日:2022年11月11日

新型コロナウイルス感染症の影響によって、雇用調整助成金の支給額が増加し、雇用保険財政はひっ迫しています。昨今の雇用情勢及び雇用保険財政の悪化で、雇用保険料率が2022年4月から段階的に引き上げられました。労働者本人負担分に影響があるのは、2022年10月からです。この記事では、雇用保険料率の変更で労働者本人と会社の負担はどれくらい増えるのか、また来年度も雇用保険率が変更される可能性はあるのかなどについて解説します。

事業の種類で雇用保険料率はどう変わる?

雇用保険料率は、労働者負担分と会社負担分の合計で計算され「一般の事業」「農林水産・清酒製造の事業」「建設の事業」で異なります。ここでは、それぞれの事業の種別によって雇用保険料率がどう変わるのかみていきましょう。

一般の事業は13.5/1000

一般の事業における雇用保険料率は、2022年4月〜9月までは9.5/1000でしたが、2022年10月以降は13.5/1000になります。

2022年4月〜9月までの雇用保険料率

一般の事業
①労働者負担 3/1000
②会社負担 6.5/1000
①+② 9.5/1000

2022年10月以降の雇用保険料率

一般の事業
①労働者負担 5/1000
②会社負担 8.5/1000
①+② 13.5/1000

農林水産・清酒製造の事業は15.5/1000

農林水産・清酒製造の事業における雇用保険料率は、2022年4月〜9月までは11.5/1000でしたが、2022年10月以降は15.5/1000になります。なお、農林水産には以下の事業は含まれていません。

  • 園芸サービス
  • 牛馬の育成、酪農、養鶏又は養豚
  • 内水面養殖

これらの事業は、一般の事業の雇用保険料率の適用対象です。

2022年4月〜9月までの雇用保険料率

農林水産・清酒製造の事業
①労働者負担 4/1000
②会社負担 7.5/1000
①+② 11.5/1000

2022年10月以降の雇用保険料率

農林水産・清酒製造の事業
①労働者負担 6/1000
②会社負担 9.5/1000
①+② 15.5/1000

建設の事業は16.5/1000

建設の事業における雇用保険料率は、2022年4月〜9月までは12.5/1000でしたが、2022年10月以降は16.5/1000になります。農林水産・清酒製造の事業と建設の事業の雇用保険料率が高めに設定されているのは、業務の実態として季節的業務に従事する人が多いためです。入職・離職に際する給付と負担のバランスを考慮して、一般の事業よりも負担率が高く設定されています。

2022年4月〜9月までの雇用保険料率

建設の事業
①労働者負担 4/1000
②会社負担 8.5/1000
①+② 12.5/1000

2022年10月以降の雇用保険料率

建設の事業
①労働者負担 6/1000
②会社負担 10.5/1000
①+② 16.5/1000

雇用保険料率の変更で増える負担はどれくらい?

2022年10月以降からの雇用保険料率の変更で、労働者の本人負担と会社負担はどれくらい増えるのでしょうか。ここでは平均給与が30万円の一般事業の会社において、従業員の規模ごとにどれくらいの差があるのかをみていきます。なお、雇用保険料は賞与についても適用があります。賞与の支払いがあった月の料率が適用されるので、例えば2022年10月に賞与が支払われた場合には、新料率が適用されます。

本人負担への影響

平均給与30万円の会社(一般事業)の場合、2022年4月〜9月までの本人負担は、1ヶ月1人当たり30万円✖️0.003=900円です。
一方、2022年10月以降の本人負担は、1ヶ月1人当たり30万円✖️0.005=1500円となります。

このケースでは、2022年10月以降の雇用保険料率の変更によって本人負担は1ヶ月で600円増えますが、1年に換算すると7200円の増加です。

会社の法定福利費への影響

次に、会社の法定福利費への影響をみていきます。法定福利費とは、会社が負担することが義務付けられている従業員の福利厚生費用です。これには健康保険料、厚生年金保険料、雇用保険料、労災保険料などがあります。

法定福利費に含まれる雇用保険料の料率が、2022年10月以降、一般の事業で6.5/1000から8.5/1000に変更されたときの会社負担の変化をみてみましょう。2022年4月〜9月までの会社負担は、平均給与が30万円の場合には、1ヶ月1人当たり30万円✖️0.0065=1950円です。

一方、2022年10月以降の会社負担は、1ヶ月1人当たり30万円✖️0.0085=2550円で、雇用保険料率の変更によって1ヶ月1人あたりの会社負担は600円増加します。そして、従業員の規模が多くなると会社負担はさらに大きくなるでしょう。従業員規模ごとの会社負担は以下の通りです。

平均給与30万円の会社(一般の事業)の雇用保険料率変更による負担金額の増加

雇用する従業員数 1か月の会社負担の増加額 年間の会社負担の増加額
50人 3万円 36万円
100人 6万円 72万円
300人 18万円 216万円
500人 30万円 360万円

500人規模の会社では、雇用保険料率の変更による年間の負担増加額は360万円です。このように、従業員規模が大きくなればなるほど、雇用保険料率変更の影響は法定福利費に大きな影響を与えることが分かります。

雇用保険料率は弾力的変更が可能

雇用保険料率の変遷と弾力的変更

雇用保険料率は「雇用保険法等の一部を改正する法律案」が国会で成立することで決定されます。これまでの雇用保険料率(一般の事業)の変遷は以下の通りです。

年度 雇用保険料率(一般の事業)
平成24年 13.5/1000
平成28年 11/1000
平成29年 9/1000
令和元年 9/1000
令和2年 9/1000
令和3年 9/1000
令和4年4月〜9月 9.5/1000
令和4年10月以降 13.5/1000

雇用保険料率は、令和4年度から久々に上がりましたが、過去にも雇用保険料率が高い時期があり、その時々の社会情勢によってたびたび変更されてきました。​​​​毎会計年度において一定の条件(後述)を満たすと雇用保険料の弾力的変更が可能とされています。

弾力的変更とは、その時々の社会情勢に応じて、臨機応変に保険料を変更することです。昨今の、新型コロナウイルス感染症の蔓延で、雇用保険財政がひっ迫したために、雇用保険料率が段階的に引き上げられましたが、今後情勢が変われば変更される可能性はあるでしょう。

令和5年度の雇用保険料率は変更される?

令和5年度の雇用保険料率変更の可能性についてみていきます。

「労働保険の保険料の徴収等に関する法律第12条第5項」では、厚生労働大臣は毎会計年度において、徴収保険料額並びに国庫の負担額の合計額と失業等給付額等との差額を積立金に加減した額が失業等給付額等の二倍に相当する額を超え、又は一倍を下るに至つた場合に、必要があると認めるときは、一年以内の期間を定めて雇用保険率を変更することができると規定されています。

すなわち、以下の式(A)で求められた値が、1以上かつ2以下の範囲にあれば雇用保険料率の変更はありませんが、それ以外の場合には変更が可能です。

1≦式(A)の値≦2のとき 保険料率変更なし
式(A)の値>2のとき 保険料率引き下げ可能
式(A)の値<1のとき 保険料率引き上げ可能

また、過去3年間の失業等給付関係の収支状況とそこから求めた式(A)の値は、以下の表の通りです。

令和元年度決算 令和2年度決算 令和3年度決算
保険料収入 11,099 3,809 3,908
失業等給付にかかる国庫負担金 230 230 17,550
失業等給付費 16,626 13,826 13,093
積立金残高 44,871 19,826 12,460
式(A)の値 2.38 0.73 1.59

令和元年度決算においては、式(A)の値は2.38となっており、雇用保険料率の引き下げが可能でしたが、実際には引き下げは行われていません。

一方、令和2年度決算においては0.73となっており、雇用保険料率の引き上げが可能でした。実際、令和4年度に引き上げが行われています。そして、令和3年度決算においては1.59となっており、これは1以上かつ2以下の条件に該当するため、令和5年度においては雇用保険料率の変更はないと予想できます。
(本記事は 令和4年9月28日時点の情報をもとに作成しています)

まとめ

2022年10月以降の雇用保険料率の変更によって、労働者と会社の双方の負担が増えることになります。

多くの従業員を抱えている会社ほど、雇用保険料率変更による影響は大きいです。法定福利費の1つである雇用保険料を多く負担することになるため、これまで以上に労務管理をしっかりと行うことが求められるでしょう。

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