助成金・補助金 読みもの(人事・労務向け記事)

時間外労働等改善助成金 (時間外労働上限設定コース)を詳しく解説!

投稿日:2019年3月31日

国内の労働環境を改善するため、国は労働時間の見直しや有休休暇の取得促進などの内容を盛り込んだ「働き方改革関連法」を2018年に成立させ、2019年4月から適用されています。これに伴い、働き方改革を行う中小企業への支援の一環として、「時間外労働等改善助成金」が設けられています。

本助成金には、勤務間インターバル導入コース、時間外労働上限設定コース、職場意識改善コース、テレワークコースの4つのコースが設けられていますが、今回は「時間外労働上限設定コース」について解説します。

時間外労働上限設定コースは、その名の通り、時間外労働に一定の上限時間を設定した企業に対して支給される助成金です。2019年4月1日から中小企業に対して、時間外労働の上限規制が導入されています。このコースは、全国の中小企業で多く見られる長時間労働の見直しのため、労働時間の縮減に取り組む中小企業の事業主を支援する目的で設けられたコースです。

具体的には、時間外労働の上限規制の導入に向けた36協定の見直しを検討している場合や、月の時間外労働が45時間を超えており、業務の抜本的な見直しを検討している場合などに効果的な助成金となっています。

国が示す活用事例としては、新たな機械・設備を導入、始業・終業時刻をソフトウェアの導入により平準化、専門家のコンサルティングによる業務改善などを目的としたものが挙げられています。これらはいずれも助成金を活用して現場の業務を効率化することにより、生産性が向上し、時間外労働の縮減に繋がります

対象事業主

本補助金は、平成29年度又は平成30年度において、労働基準法第36条第1項の協定で定められた限度時間以上の時間外・休日労働に関する協定を締結している中小企業事業主で、時間外労働及び休日労働を複数月行った労働者がいる場合に対象となります。
補助金の支給対象となる取組については、以下の8つが挙げられています。

①労務管理担当者に対する研修
②労働者に対する研修、周知・啓発
③外部専門家によるコンサルティング
④就業規則・労使協定等の作成・変更
⑤人材確保に向けた取組
⑥労務管理用ソフトウェア、労務管理用機器、デジタル式運行記録計の導入・更新
⑦テレワーク用通信機器の導入・更新
⑧労働能率の増進に資する設備・機器等の導入・更新

なお、①、②における「研修」には業務研修も含まれます。また、⑥、⑦、⑧における機器等の導入・更新は、原則としてパソコン、タブレット、スマートフォンは対象になりません。
また、本補助金には成果目標が定められており、これを達成することが求められます。事業主は平成31年度又は平成32年度に有効な36協定の延長する労働時間数を短縮し、以下のいずれかの上限設定を行った上、労働基準監督署へ届け出を行うことが求められます。具体的な上限設定は以下の3種類です。

①時間外労働時間数で月45時間以下かつ、年間360時間以下に設定
②時間外労働時間数で月45時間を超え月60時間以下かつ、年間720時間以下に設定
③時間外労働時間数で月60時間を超え、時間外労働時間数及び法定休日における労働時間数の合計で月80時間以下かつ、時間外労働時間数で年間720時間以下に設定

このほかに、上記の成果目標に加えて、4週当たり5日~8日以上の範囲内で休日を増加させる成果目標を加えることも可能です。

支給額

本補助金の支給額は、上記で設定した成果目標の達成状況に応じて支給額や補助率が変動します。少々複雑ですので、自社がどの条件に該当するか事前に確認しておきましょう。
支給額は、以下のいずれか低い額になります。

①1企業当たりの上限200万円
②上限設定の上限額及び休日加算額の合計額
③対象経費の合計額×補助率3/4

さらに、②の場合、上限設定の上限額は以下の通りです。

②の上限額

時間外労働 80時間以上の事業場 60時間以上の事業場 45時間以上の事業場
成果目標1 150万円 100万円
成果目標2 100万円 50万円
成果目標3 50万円

休日加算額

事業実施後 4週あたり4日 4週あたり5日 4週あたり6日 4週あたり7日
4週当たり8日 100万円 75万円 50万円 25万円
4週当たり7日 75万円 50万円 25万円
4週当たり6日 50万円 25万円
4週当たり5日 25万円

本コースは、昨年度からの多数の変更点があります。上限額に関しては、最大150万円までと引き上げられ、週休2日性とした場合には上限額を加算できるようになっており、今年度から建設の事業、自動車運転業務に係る事業等も申請対象に追加されています。
また、業務研修、人材確保等のための費用についても助成対象となる取組として見なされるようになっています。

このように、本コースは今年度から助成内容が拡充されていますので、より長時間労働の是正のために効果を発揮してくれる助成金となりました。社内の労働時間短縮に取組む中小企業事業主様は是非活用を検討してみてください。

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