従業員の働く環境をつくる(労務管理機能) 読みもの(人事・労務向け記事)

【Q&A】有給休暇の「計画的付与制度」を導入すると有給のない社員の取り扱いはどうなる?

投稿日:2019年6月6日

2019年4月から、働き方改革関連法における労働基準法改正に伴い、すべての企業において、年次有給休暇5日取得が義務化されました。

2019年4月以降に年10日以上の年次有給休暇が付与される従業員に対して、雇用者は時季を指定し、年5日間の年次有給休暇の取得をさせる必要があります。

では、計画的付与を導入すると有給のない社員の取り扱いはどうなるのでしょうか?

年次有給休暇義務化の新ルール

2019年4月の改正により、2019年4月以降に年次有給休暇が10日以上付与される労働者を対象に、年次有給休暇を付与した日から1年以内に取得時季を指定して、5日間の年次有給休暇を取得させる必要があります。時季指定については労働者の意見を聞き、雇用者は可能な限り労働者の希望に沿った取得時季にすることが求められています。

年次有給休暇の発生用件

・雇用日から6カ月継続して雇われている
・全労働日の8割以上を出勤している

上記を満たしている場合は、勤続年数に準じて、付与日数が増えていきます。
対象者は正規雇用だけではなく、非正規雇用(パート・アルバイト・派遣)、労働時間規制が除外される管理監督者や高プロ適用者も含まれます。所定労働日数が少ない場合は、年次有給休暇の日数は、所定労働日数に応じて比例付与されます。

通常の労働者の付与日数

勤続年数 0.5 1.5 2.5 3.5 4.5 5.5 6.5以上
付与日数 10日 11日 12日 14日 16日 18日 20日

週所定労働日数が4日以下かつ週所定労働時間が30時間未満の労働者の付与日数

継続勤務日数
週所定
労働日数
1年間の所定労働日数 0.5 1.5 2.5 3.5 4.5 5.5 6.5以上
付与日数 4日 169〜216日 7日 8日 9日 10日 12日 13日 15日
3日 121〜168日 5日 6日 6日

8日

9日 10日 11日
2日 73日〜
120日
3日 4日 4日 5日 6日 6日 7日
1日 48〜72日 1日 2日 2日 2日 3日 3日 3日

年次有給休暇の「計画的付与」とは?

有給休暇義務化の法改正後のポイントや罰則について解説

年次有給休暇の「計画的付与」とは、年次有給休暇のうち、5日を超える分については、労使協定を結べば、計画的に休暇取得日を割り振ることができる制度です。

前もって計画的に休暇取得日を割り振るため、労働者はためらいを感じることなく年次有給休暇を取得することができるのがメリットです。実際に、年次有給休暇の計画的付与を導入している企業は、年次有給休暇の平均取得率が約9%高くなっています。

「計画的付与」の注意点

有給休暇の権利がない従業員、有給休暇付与日数が5日以下の従業員については、計画的付与は適用されません。有給休暇の権利がない従業員を休業させた場合には、休業手当の支払いや特別な有給休暇を与えるなどの対応が必要になります。

有給のない従業員はどのような対応方法がある?

4月に入社したばかりの有給のない新入社員に対しては、どのような対応方法があるでしょうか?
5日を超える年次有給休暇のない従業員に対しては、休業手当を支払う、または特別休暇を設けるなどの措置が必要です。

主に以下の3つの選択肢があります。

①特別有給休暇として他の従業員と同じように休んで給与控除なし
②会社都合での休みと考えて平均賃金の60%以上を休業手当として支払う
③有給の前貸し(労使協定での取り決め)

③は前貸しにより、有給付与日が変わってしまうため、①か②が妥当と考えられます。

まとめ

計画的付与を導入した際に、有給のない従業員の取り扱い方を見ていきました。具体的には、特別休暇を設けて付与日数を増やす、または平均賃金の60%以上を休業手当として支払う方法があります。

-従業員の働く環境をつくる(労務管理機能), 読みもの(人事・労務向け記事)
-

関連記事

【新型コロナ】”WEBカメラ購入費”や”クラウド利用料”が助成される!?「テレワーク助成金」の中身と申請方法を社労士が解説!

緊急事態宣言により移動が制限されたことで、テレワーク(リモートワーク)を導入した企業も多いのではないでしょうか。パーソル総合研究所が実施した「テレワークに関する調査」によると、緊急事態宣言が発表された …

【社労士が解説】2021年4月施行「改正高年齢者雇用安定法(70歳就業法)」の具体的な中身とは?企業はどう取り組むべき?

2021年4月1日より「改正高年齢者雇用安定法」が施行されました。「70歳就業法」とも呼ばれるこの法改正、どういった中身なのでしょうか。本記事では、法改正の中身と企業の取り組むべきアクションについて解 …

36協定の新様式

【記入例有り】36協定の新様式、書き方完全マニュアル(社労士が解説)

新36協定のおさらい 2018年6月に成立した「働き方改革関連法」によって時間外労働の上限規制が変わります。それに伴い、36協定のフォーマットも新様式に変わりました。 この記事では、2019年4月から …

賃金デジタル払いはすべての電子マネーに対応?導入時のメリット&デメリットとあわせて注意点も解説

2023年4月より、”労働基準法施行規則(第7条の2)が改正され、賃金(給与)のデジタル払いが、可能になったことをご存じでしょうか? デジタル払いとして電子マネーが決済アプリに振り込まれる …

【令和6年1月新設】両立支援助成金の育休中等業務代替支援コースとは? 変更点や申請の注意点

2024年1月から、両立支援等助成金の中に、育児休業を取る従業員の業務を代替するための体制整備を行った企業を支援する『育休中等業務代替支援コース』が新設されました。 この新設により、両立支援等助成金は …