人材を採用する(採用計画の立案、新卒・中途の採用活動) 読みもの(人事・労務向け記事)

ハローワークインターネットサービス機能強化(2021年9月21日~)活用のポイント

投稿日:2021年10月1日

会社目線では、求人募集の際にどの媒体を通して募集を行うか、早い段階で決断する必要があります。例えば民間の求人紹介サイトなどを活用する場合、ほとんどのケースで費用負担は免れられません。しかし、ハローワークは費用の負担はありません。この段階では「安かろう悪かろう」のイメージがあり、費用負担の発生する民間の求人紹介サイトの方が実質的には良いのではないかとの議論にもなりますが、近年サービス強化の著しいハローワークのインターネットサービスによる求人募集について更に2021年9月21日から機能が拡充しています。どのような変更があり、どのように活用できるのか確認していきましょう。

2021年9月21日~機能拡充

なぜ機能強化に至ったのか

多くの場合、ハローワークへ足を運び求職活動をする必要がありました。しかし、機能強化後は必ずしもハローワークへ足を運ばなくても求職活動が可能となり、感染拡大防止を視野に入れたこと、より早期に求職者の求職活動を終了し、再就職を果たせるように機能強化が図られたものと考えます。

オンライン職業紹介

求人者マイページを開設していることが条件ですが、端的にはオンラインでの職業紹介を受けられるようになります。職業相談時に希望条件を確認できている求職者と求人者の適合性を鑑み、ハローワークから紹介が行われるということです。流れとしては求人情報を掲載し、ハローワークが確認後、受理されると情報が公開され、オンライン上で応募書類の受け付けも可能です。その後、実際に応募があれば、マイページのメッセージ機能で応募者と面接日時を調整し選考を行うという流れです。選考後はハローワークに選考結果を報告する必要がありますが、マイページから可能となっています。オンライン職業紹介導入により、応募書類の管理や採否入力の効率化が促進されたことはメリットと言えます。

オンライン自主応募

旧来、求職者はハローワークに訪問し希望する企業へアプローチをかけることが必要でした。今後はオンラインで(ハローワークに足を運ばなくても)求職番号を取得できます。言うまでもなく訪問するには感染リスクが伴うことから感染拡大防止に寄与すること、よりスピーディーに企業へのアプローチをかけられるようになるというメリットが挙げられます。実務上はネットが使えないという特定の事情がある場合を除き、求職者の応募が容易になり、応募者層が広がる可能性もあり、求人者、求職者ともにメリットと言えるでしょう。

尚、オンラインでの自主応募を可能にするには求人者側で「オンライン可」の状態としておく必要があります。マイページの中で応募書類の添付もできる点も大きな改正点です。よって、希望する企業がそもそもマイページを持っていない場合はオンラインでの応募はできないということです。

オンライン職業紹介とオンライン自主応募の違い

オンライン職業紹介は求人者側がオンライン上で求人者の紹介を受けられる機能で、オンライン自主応募は求人者が実際にハローワークへ足を運ばずにマイページ上で直接応募することができる機能です。

オンライン自主応募 運用上の注意点

ハローワークからの紹介が助成金受給の要件である場合、注意が必要です。オンラインの場合はハローワークの窓口に全く足を運ばずに求人者と求職者が直接やり取りを行うため、助成金の対象となりません。また、一度ハローワークへ行き、紹介状を取得した後にオンラインで応募する場合には紹介状が出ていることから対象となり得ます(助成金受給の際は要確認)。
尚、オンライン自主応募を受け付ける場合には2021年9月21日以降に求人者マイページから変更を行う必要があります。

また、オンライン自主応募があった場合には人事担当者(中小零細企業の場合には社長)がメールの受診が滞りなくできる状態であるか否かの確認、実際にメールが届いているかの確認を定期的に行う必要があります(メール受信の通知機能が活用可能であれば活用することが望ましい)。長期間、受診したメールを放置状態となっていた場合、他の求人者に応募されてしまう可能性もあるため、注意が必要です。

ハローワークの求人システムは活用すべき?2つのポイント

ハローワークに求人を出すべきかについて、筆者はハローワークの求人システムを十分に活用すべきと考えます。これは、これまでハローワークに求人を出していなかった会社もハローワークに求人を出し、新しくなったシステムを活用していくことが望ましいという意味です。

  1. 最大のメリットは、掲載可能な文字数に換算してもハローワークの求人システムは民間の媒体に決して引けを取らず、そもそも全て無料で活用できる点です。また、何かしら求人広告を掲載している会社もハローワークの求人は活用すべきでしょう。例えば現在活用している求人広告とハイブリッドに進めたとしてもハローワーク単体での費用は発生しません。
  2. ハローワークから人材を雇用すると国からの助成金を活用できます。例えば、高年齢者や母子家庭の母等の就職困難者をハローワークの紹介で雇用すると60万円の支給が受けられるといったことがあります。(支給額や条件は企業規模や雇用形態によって異なります。)

尚、自社で求人票の作成を行うべきか否かについては、顧問社労士がいる場合は委ねるほうが良いでしょう。社労士に委ねるメリットとして、例えば固定残業代を採用している場合の記載方法(例えば固定残業代の時間は何時間分に相当し、基本給と明確に区分されているか)や募集の際の表現に性別を限定する表現(例えば主婦歓迎)が含まれている場合にはそのような表現は男女雇用機会均等法で禁止されていることから、可能であれば一度専門家の目で添削してもらった上で提出する方が望ましいと考えます。
実務上はオンラインでの求人票作成、公開を希望する場合、会社として「親アカウント」を登録後、マイページを作成し、事務代理社労士のメールアドレスを「子アカウント」として登録することで社労士に求人票の添削を委ねることができます。工数や負担についてはオンラインでマイページを作成し、求人票の作成、公開を進めていく場合、最初はある程度の慣れも必要ですが、多くの場合紙ベースよりもスムーズな求人票公開が可能です(写真の活用も可能)。

人事担当者等が準備しておくこと

今回の変更点全てを暗記することは困難ですが変更点の概要を把握し単体、メリットが大きい場合に自社にとって現時点で運用可能か否か、また、どの程度の変更で運用が可能となるかの精査が必要です。また、前提としてオンライン上の管理が必要となることから最低限のPCスキルは必要と言えるでしょう。その点も踏まえて担当者の人選をしていくことが適切です。

最後に

働き方改革により雇用の流動性も促進されていると考えます。新卒一括採用後定年まで勤めるという働き方のみではなくなってきました。また、スキルアップ転職というキーワードもあるように求職活動自体は決して悪いイメージではなくなってきました。より早期に求人者と求職者が合意に達して、労使関係が確立されることで双方にメリットがあると言えます。今回のハローワークインターネットサービス機能強化は時代に則した変更であり、導入可能な企業は活用していきたい機能です。

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