厚生労働省や各自治体が提供する両立支援のための助成金・奨励金は、労働者が仕事と家庭を両立できるよう支援する制度です。
事業主が、育児や介護との両立を行う労働者の雇用継続を目指し、就業環境の整備に取り組むことを奨励するための制度で、事業主に対して助成金・奨励金が支給されます。
出生時両立支援、育児休業等支援、育休中等業務代替支援、柔軟な働き方選択制度等支援、不妊治療両立支援、などが主な取り組みの対象です。
本記事では、両立支援に関する取り組みの助成金・奨励金について詳しく解説します。
【参考】厚生労働省ホームーページ:https://www.mhlw.go.jp/content/001226123.pdf
厚生労働省の両立支援の助成金・奨励金
1. 出生時両立支援コース
「出生時両立支援コース」は、男性労働者が育児休業を取得しやすい雇用環境整備や業務体制整備を行い、育児休業を取得した男性労働者が生じた事業主に助成金を支給する制度です。
以下に、その主な内容をご紹介します。
- 対象となる事業主
中小企業事業主(常時雇用する労働者が300人以下)。 - 助成対象となる事業
育児休業の取得、職場復帰について、プラン作成による支援を実施する方針の社内周知、労働者との面談を実施し、本人の希望等を確認・結果記録の上、プランを作成、業務の引き継ぎを実施し、対象労働者が合計5日(所定労働日4日)以上の育児休業を取得。 - 助成額
第1種では、1人目の場合20万円、雇用環境整備措置を4つ以上実施の場合30万円、2人目・3人目の場合10万円。第2種では、1事業年度以内に30ポイント以上上昇した場合60万円、2事業年度以内に30ポイント以上上昇した(または連続70%以上)場合40万円、3事業年度以内に30ポイント以上上昇した(または連続70%以上)場合20万円。
2. 介護離職防止支援コース
「介護離職防止支援コース」は、介護休業や介護両立支援制度を利用する労働者に対して、両立支援等助成金を支給する制度です。
以下に、その主な内容をご紹介します。
- 対象となる事業主
中小企業事業主(常時雇用する労働者が300人以下)。 - 助成対象となる事業
介護休業の取得、職場復帰について、プラン作成による支援を実施する方針の社内周知、労働者との面談を実施し、本人の希望等を確認・結果記録の上、プランを作成、業務の引き継ぎを実施し、対象労働者が合計5日(所定労働日)以上の介護休業を取得。 - 助成額
休業取得時に30万円、職場復帰時に業務代替支援加算で新規雇用20万円、手当支給等5万円。
3. 育児休業等支援コース
「育児休業等支援コース」は、育児休業取得者の業務を代替する労働者の業務体制整備を実施する事業主に助成金を支給する制度です。
以下に、その主な内容をご紹介します。
- 対象となる事業主
中小企業事業主(常時雇用する労働者が300人以下)。 - 助成対象となる事業
育児休業の取得、職場復帰について、プラン作成による支援を実施する方針の社内周知、労働者との面談を実施し、本人の希望等を確認・結果記録の上、プランを作成、業務の引き継ぎを実施し、対象労働者が合計5日(所定労働日)以上の育児休業を取得。 - 助成額
休業取得時に30万円、職場復帰時に業務代替支援加算で新規雇用20万円、手当支給等5万円。
4. 育休中等業務代替支援コース
「育休中等業務代替支援コース」は、育児休業を取得した労働者の業務を代替するための措置を行う事業主に対して助成金を支給する制度です。
以下に、その主な内容をご紹介します。
- 対象となる事業主
中小企業事業主(常時雇用する労働者が300人以下)。 - 助成対象となる事業
育児休業を取得した労働者の業務を代替するための措置を行う事業。具体的には、育児休業を取得した労働者の業務を代替する周囲の労働者への手当支給等を行った場合や、育児休業を取得した労働者の代替要員の新規雇用(派遣の受入れを含む)を行った場合が対象。 - 助成額
育児休業取得者1人あたり最大125万円が助成されます。
【参考】厚生労働省ホームーページ:https://www.mhlw.go.jp/content/001218930.pdf
5. 柔軟な働き方選択制度等支援コース
「柔軟な働き方選択制度等支援コース」は、育児を行う労働者が柔軟な働き方を可能とする制度を複数導入することが要件となる制度です。
具体的な制度としては、不妊治療休暇、所定外労働の制限制度、深夜業の制限制度、介護のための在宅勤務制度、介護のためのフレックスタイム制、時差出勤制度、短時間勤務制度などの導入が該当。
労働者が上記の制度を利用した場合、中小企業事業主に対して助成金が支給されます。
- 助成額
制度を2つ導入し、労働者が制度を利用した場合には20万円、3つ以上導入し、労働者が制度を利用した場合には25万円。
6. 不妊治療両立支援コース
「不妊治療両立支援コース」は、不妊治療と仕事との両立に資する職場環境の整備に取り組み、不妊治療のために利用可能な休暇制度や両立支援制度を労働者に利用させることを目的とした制度です。
具体的には、不妊治療と仕事との両立に資する職場環境の整備、不妊治療のために利用可能な休暇制度や両立支援制度の導入が該当。
労働者が上記の制度を利用した場合、中小企業事業主に対して助成金が支給されます。
7. えるぼし認定
「えるぼし」認定は、厚生労働大臣が女性の活躍を推進している企業を認定する制度です。この制度は、2015年に制定された「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律(略称:女性活躍推進法)」に基づいています。
認定を受けるためには、以下の5つの評価項目について一つ以上基準を達成した上で、「女性の活躍推進企業データベース」に実績を公表することが必要です。
採用、継続就業、労働時間等の働き方、管理職比率、多様なキャリアコースなどが評価項目となります。
えるぼし認定を受けると、企業のイメージアップや社員満足度の向上、公共調達や低利融資の優遇などのメリットがあります。
8. くるみん助成金
「くるみん助成金」は、子ども・子育て支援に積極的に取り組む中小企業に対して、雇用環境整備の実施に要する経費を助成する制度です。
- 対象となる事業主
「くるみん認定」または「プラチナくるみん認定」を受けた中小企業事業主(常時雇用する労働者が300人以下)。 - 助成対象となる事業
労働者の職業生活と家庭生活との両立が図られるようにするために必要な雇用環境の整備を行う事業。 - 助成額
50万円を上限に審査により助成額を確定。
東京都独自の両立支援制度
東京都では働く人々が家庭と仕事の両立をできるようにするための様々な制度を提供しています。その一部は以下の通りです。
1. 家庭と仕事の両立支援ポータルサイト
育児や介護、病気治療や不妊治療と仕事の両立ができる職場環境の整備を支援しています。
2. 両立支援推進企業登録制度
育児・介護などの家庭と仕事の両立に積極的に取り組む企業を登録し、両立支援制度の整備状況や利用実績に応じた「両立支援推進企業マーク」を付与。
3. 働くパパママ育業応援事業
働く人のチャイルドプランサポート事業や女性従業員のキャリアアップ応援事業など、働く女性を応援する事業を展開。
4. 育児・介護や病気治療と仕事の両立推進等を支援
研修会の実施、専門家の派遣、奨励金の支給を行っています。
これらの制度は、働く人々が家庭と仕事を両立できるようにするためのもので、東京都が積極的に推進中です。
愛知県独自の両立支援制度
1. ファミリーフレンドリー企業
「ファミリーフレンドリー企業」は、愛知県が運用している制度で、社員が仕事と生活の調和を図ることができるよう積極的に取り組んでいる企業を指します。この制度は、ワーク・ライフ・バランスの実現に取り組む企業を奨励し、その取組を広く紹介するために設けられました。
登録対象は、愛知県内に本社や主たる事業所を置く企業(法人のほか、団体等を含みます)です。
登録要件としては、以下の条件を満たすことが必要です。
- 次世代育成支援対策推進法に規定する一般事業主行動計画を策定し、都道府県労働局に届け出ていること。
- 育児・介護休業法を遵守した就業規則、規程等が整備されていること。
- 一般事業主行動計画に定めた取組目標や規則等で定めた子育て支援制度の公表に同意すること。
この制度を通じて、ワーク・ライフ・バランスの取り組みを進めることにより、企業のイメージアップ、優秀な人材の確保、定着のほか、従業員の意識の向上を期待できます。
2. 男性育児休業奨励金
「男性育児休業奨励金」は、愛知県が運用している制度で、男性従業員が育児休業を取得した中小企業等に対して、奨励金を支給するものです。
具体的には、養育する子が2歳になるまでの間に、男性従業員が育児休業(産後パパ育休を含む)を通算14日以上取得し、当該従業員が原職等に復帰した場合に奨励金が支給されます。
- 支給額
取得期間が14日以上28日未満の場合は50万円、28日以上の場合は100万円。
支給対象となるのは、以下の要件を満たす法人または個人事業主です。
具体的には、養育する子が2歳になるまでの間に、男性従業員が育児休業(産後パパ育休を含む)を通算14日以上取得し、当該従業員が原職等に復帰した場合に奨励金が支給されます。
- 常時雇用する従業員数が300人以下であること。
- 愛知県内に本社(主たる事務所)を有すること。
- 雇用保険の適用事業所であること。
- 就業規則に育児休業制度を設けていること。
- 次に掲げる要件に該当する男性従業員を1人以上雇用していること。
→雇用保険の被保険者であること。
→養育する子が2歳になるまでの間に育児休業(産後パパ育休を含む)を通算14日以上取得していること。 - 当該育児休業について2023年4月1日以降に休業を開始していること。
- 育児休業開始日の直前2か月以上雇用されており、県内の事業所に勤務していること。
- 育児休業終了後、原職等に復帰し、2か月以上雇用されていること。